電車の中で

仕事帰りの近鉄の中、ふと車内を見ると、フロアの真ん中に雑誌が落ちとった。なんと風俗店の案内雑誌。でも回りの乗客はみな無反応や。見たいようで見たくないのか、携帯メール中の高校生よ。居眠りする兄ちゃんに日経新聞を読みふけるおっちゃんはどうやねん、ファッション雑誌に夢中な姉ちゃんは違うかぁ。みんな視界の片隅で捉えて気にしとるんやろ。一度はじーっと見て、タイトルを読んでドキッとしとるんやろ。そんなみんなの心のアイドルやのに、風俗雑誌は放置プレイの真っ只中や。あぁもったいない。きっと今、落としたヤツは目の前に広がる酒池肉林の絵図を見ながら、わずか数メートルの距離を数光年くらいに感じてるねんで。
っちゅうか、落としたん誰やねん。大スポのおっちゃんか鼻くそほじっとる兄ちゃんか。そこらへん怪しいでぇ、なんて思ってジロジロ見ているわしが一番怪しかった。慌てて新聞を広げて咳払い一つや。