王滝100kmレポート

本日、上司は全員出張。わしは現場の事務所内で一人ポツンとノートパソコンに向かっとります。このチャンスを見逃す手は無し。今日は仕事せんから。精魂尽きるまで書くから。




ほんじゃ行っとこか、汗と涙の道中記。読者の皆さんも涙チョチョギレルはずやから、青いハンカチでも握り締めつつ読んでくれぃ。但し『王滝が[れんしぅ]に当たるのか? 本番ではないのか?』ってなツッコミは不許可とするで。




さてさて、まずは土曜日のこと。
寝るのが遅くて睡眠不足やったのに、興奮を隠し切れないのか朝の6時には起床。荷物を積み込みバイクを屋根に載せ、いざ出発! とした直後に雨粒がポタリ。すぐにザーザーと本降り。こら前途多難やな・・・。


天理から名阪国道に乗り、東名阪〜名古屋高速〜数kmだけ名神高速〜中央道と経て、中津川ICを降りたのが正午。ちょと早過ぎやけどそのまま会場入りや。松原スポーツ公園で受付を済ませ、偶然会ったひろゆき君と談笑した後にお宿へ移動。
以前も書いたけど、宿のおばちゃんは伊東四朗似(漢字に注意)。のはず。2年ぶりの再開やし、食卓の秘儀・妙技を伝授してもらう気満々で乗り込ん・・・似てへんやん。互いに再開を喜びつつも、内心は裏切られた気分。うぅむ、顔が変わったのか、わしの目が歪んだのか。ひょっとして整形した?>おばちゃん。
んでも、宿代をまけてもらってビールも無料で出してもらって、朝飯も4時から食えるように準備してもらって、ほんま感謝感謝。この触れ合いも王滝の大きな楽しみなのよ。







明けて日曜日。朝3時半。
目が覚めた時から久しぶりの「真剣モード」。いつもとは目つきが違うのが自分でも分かる。朝飯の味は全然分からへん。舌も胃も緊張しとるわ。


夜中も降り続いていた雨は止んでいる。真っ暗な山道を愛車カルディナで駆け下り、いざスポーツ公園へ。
ブレーキ・サス・空気圧、自分と嫁はんのバイクをチェックする。全部OK。補給食OK。ストレッチOK。体調・・・普通。これでエエねん。絶好調とか身体が軽いとか、そんな状態でタイムが出ても、後から思い出すとフロックかと思ってしまうから。今日のタイムがわしのほんまの実力、何度でも出せるタイムのはず。


 5時頃。まだ夜明け前。


 徐々に明るくなってきた。


 MONTYが・・・。42kmダンシングは『漢』


相変わらず雨は降らず、むしろ空は明るくなってきた。気温も上がってきたんで、いつものメッシュノースリーブ姿に変身。着ていたウィンドブレーカーは嫁はんに託し、スタート時間をじっと待つ。緊張しているような落ち着いているような、妙な気分やわ。


 スタート前


午前6時、神主さんのスタート合図(全然分からへんがなっ)で900人がいっせいに出発。この集団の何処かにいるであろう知り合いの方々全員のことを考えつつ。「会えないやろうけど、みんな怪我無く帰ろな」。っと思ったら直ぐ後ろにひろゆき君出現。しばしお喋りしながらアスファルトをちんたらと進むで。


やがて道は登り始め、幅も狭くなってくる。みんな先導車の後についてポジションを確保しようとしてるんやけど、この時点でハーハー言ってる人も・・・悪いこと言わんから下がっとき。ハンドルが触れ合うような状態で余裕の無い走りをしとったら怪我のもとやから。わしはサイドからちょちょいと上がっていって、車の約10m後方位置を確保。少し前に村パパさんのお尻が見えるけど、タッチするには離れてたんで諦めたわ。
林道手前でFORZAの佐々木選手が『寒そうですね〜』なんて話し掛けてくれたんで、少しダベりながらダートへ。肩剥き出しでも全然寒くないんやけどね。




右のヘアピンにて先導車が離れレーススタート。皆、一気にペースを上げ・・・るけど遅いんで、サイドからかわしつつ順位を上げていくで。
先頭は1人逃げ、100kmコースレコード保持者の小笠原選手と勝手に断定や(あとで知ったけど違った)。それに遅れること約20m、バイクとウェアから勝手に命名するに第2集団はスペシャジャージの竹谷選手・TREKジャージは松本選手・ドリンキングジャージは白石選手? と、黄色いジャージはhikime2選手。・・・こんな所にいてええのか、わし。。
とは言え、先行逃げ切れずが得意なわしにとっちゃぁ、ちょうど良いペース。きっと1人でもこれくらいで走るやろう。御三方にとっちゃアップの途中なんやろな。


早くも後続の姿が見えなくなったんで、一つ目の登り頂上手前でペースを落として集団とはサヨナラ。しばらくは、長い直線で姿を確認できる距離で進んだ後、やがて姿を見ることも無くなったわ。あれに付いて行こうとすると自滅へ一直線やな。
しょっぱなの下り、姿が見えてなかったはずやのに、1名がかっ飛ばしてわしをパス。おおぉー、下り速ぇぇ! いやいや、わしが乗れてねー! ブレーキピストンが出てしまっているらしく、遊びが少なくなっているのが妙に怖いねん。バンクさせられへんからコーナーへの突っ込みも甘すぎ。まぁゆっくり行こう・・・。




毎年、サイクルメーターの表示は距離に固定しておいて、ゴール地点までタイムはお楽しみ♪ ってのがわしのやり方。もちろん今年も、と思ったらメーターが全く反応してへんがな〜、あれれ。今年の王滝は1mも進めへんみたい。
マグネットが歪んだかなって思ったけど、10kmおきに看板があるし気にもせんかった。けど、そのうち節電機能が働いて画面が時計表示に。あらま、常にタイムと正面切って向き合わなアカンのね、今年。きびし。






え〜、こっからあんまし書くネタありません。モクモクと踏み、うひゃぁ〜と下る。これの繰り返し。記してある距離は超いい加減なんで信用しないようにね。









●30km地点?で白石選手?、パンクで後退。その後追っかけてくることも無し。
●40km地点?で竹谷選手、パンクで後退。その後70km地点くらいでぶち抜かれた。速すぎる、格が違いすぎる。
●50km地点?でTREKジャージ、いきなり後ろから現れパス。
  『ちぃ〜っす!』
  「おおっ!? ひょっとして野口さん!?」
  『はい!』
  「頑張って〜!」
  『はい!!(フェードアウト)』
とびきりの笑顔とそのスピードのアンバランスが最高に格好良かったわ。
昔、わしが初めてビンゴXCビギナークラスで表彰台3位に立った時、ぶっちぎりの優勝を飾ったのが野口選手やった。それから10年以上経って、向こうはアジアチャンピオン。こちらもそれなりに走れるライダーになって、プラザ阪下から遠く離れた山中で、こうして挨拶を交わすとは。もちろん野口選手は覚えている由もないけど、影ながらファンだぜ応援してるぜ、ノグネンっ。


●60km地点?で、初めに抜いていった方がストップ。パンクもしてないけど何故やろう?
  「トラブルですか?」
  『頑張って下さ〜い。』
声が寂しそうやった。抜いてゴメン。(後で分かったけど、この人が小笠原選手やった)


気の毒やけどトラブルも実力のうち。明日は我が身、いやいや、3分後は我が身。気ぃ付けな。






なんて真剣に考えてたら、5分後、ホンマにトラブル発生!
 シートが上を向いてきとるがな。


少しくらいは我慢できるやろと走ってたけど、徐々に、でも確実にダウンヒラー状態になってくる。これはアカン。
ストップしてサドルバッグの中に工具を探る。冷静なつもりやけど手が慌てとる。シートのクランプボルトにアクセスしたいんやけど、腕も疲れているのか、サドルバッグの取り外しがなかなかでけへん。ボルト(1本締め)を緩め、角度を調整して締めなおし。これだけのことに1分はかかってしまって、はやる心をおさえながら再スタート。




しかし、いったん動くようになった箇所はまた動くもの。第2CP直後でビデオカメラに映されながら2回目の締めなおし。先頭に近いライダーのトラブルって格好のネタやんなぁと考えながら、質問に答えつつ必死で修理。
その後も4回・5回と止まっては1分近くかかって直して、を繰り返すものの、徐々に動く速度が速くなってきて、そのうち一つの振動ですらグラリと傾くようになってもうた。なんともならんとの焦りがいらつきに変わっていく・・・












 「くっそぉーー!!!!」




御嶽の山々にこだまするシャウト一発。エコーが自分を冷静にさせてくれたわ。
3分のタイムロスを自分に許して、下り坂でバイクを止めた。サドルバッグを外しボルトを抜き、ブラケット部分を完全にばらして、滑り止めのギザギザ部分をグローブで丹念に泥落とし。120kmの選手が2人、何をしているのかと不思議そうに見ながらパスしてったけど、気にしない。




 上の光っている所がツルツルになってるの。


見ると、ギザギザが磨り減っているのは後ろの部分だけ。
 「へぇ〜、ここだけで保ってるんやぁ。ほんなら逆向けにしたらイケるかも。」
前後をひっくり返してサドルを取り付け。サドルバッグのブラケットがあるんで後ろから指を入れられず、四苦八苦しながらボルトを締めて作業終了。これでも動くようならCP3でリタイアと覚悟を決めた。お小水のアーチも青空に描いてみせた。おっ、晴れてるやん、ええ天気になったなぁ。ついでに、ち○こを掴んだその手でバナナ(ほんまもんの方)も掴んで胃袋に収めたぜ。
さぁ、深呼吸して再出発、行くでっ!!




下りの続きをガタガタと走る。シートは動かへん。
上り返しでシートに負荷をかけたままペダリング。ピクリともせぇへん。いける、いけるでっ。





第3CPを過ぎて残り約15km。時刻から考えてみて、頑張れば5時間半を達成できるかも。でも時計狂ってへんやろな、行く前に合わせたはずやけど…。ってな期待を持ったんでペースアップ。やがて、先ほど抜かれたライダーのうち1名に追いつく。FORZAの方やって、少しだべった後にパス。
毎年、この辺りから42kmのライダーがポツリポツリと姿を現すねんな。特に今年は早かったわ。追い抜く際、ほとんどの人に「頑張って〜」とか声をかけるようにしてるねんけど、反応は様々。『はい!』って気持ちのいい返事の人もいれば、何も言わず怒ったような顔をする人も。怒るべき相手はわしじゃなくて、準備不足の自分の方やで。苦しみを楽しみに昇華でけへん人には向いてへんね、この大会。というか自転車イベント全て…。


やがて最後の長〜い下り坂に突入。これまで90kmを頑張ってきたご褒美かのように、ご機嫌なトレールがゴールまで延々と続いとって、気分は最高・スピードも最高。42kmライダー達に道を譲ってもらいお礼を言いながら、砂埃を巻き上げたわぁ。時刻は11時10分、もはや5時間30分を切るのは確実。
坂が少しなだらかになったところで120kmとの分かれ道。これだけ楽しい気分を味わった後、更に20kmを走るのは気分的にも辛いやろなぁ。わしやったら120kmにエントリーしてても、そのままゴールの方に進路を取りそう。


そして最後の平坦路。それまでわりかし元気やって、これまでの王滝で1番楽な日やったけど、もう脚に力は残ってへんかった。無理矢理アウタートップを踏んで速度を保つ。あと1km!!








視界が開けて王滝川に架かる橋が見えた。対岸にはSDAの垂れ幕と大勢の人達。放送で何か叫んでるけど、よく聞き取れない。あぁ、終わりや・・・


という時、人ごみの正面に嫁はん発見! わしだけのゴール発見!!
クールにいくはずやったのに無意識のうちにガッツポーズが出て、そのままゴールへ飛び込んだ。




ひとしきり2人で喜びをかみ締めた後、振り返ってタイム表示を確認。メーターの時計は狂ってへんかった、目標クリア&自己ベストを15分も更新。自分で言うのもなんやけど、素晴らしい、素晴らし過ぎる。
勝因(?)としては、苦しい限界まで追い込まなかったことかな。そこまでやると負荷に耐えられなくなって、逆にペースダウンしたと思うわ。急がば回れ、速く行きたきゃゆっくり走れの精神が功を奏したのやろう。


第2CPでカメラを回していたオッチャンがまた現れて撮影。何を聞かれてなんて答えたのか覚えてへんけど、シドロモドロになってた気がするなぁ。多分雑誌の取材と思うんやけど、2人並んで写真撮影もされてもた。一瞬の有名人気分。やけど、回りのみんなもじろじろ見るんで、そそくさとその場を離れスポーツ公園へ戻ることとしたわ。ガンガン走って注目されるより、2人で並んで走ってた方がずっと気持ちええもんね。




表彰式会場では村パパさんに『嘘つき〜』といじめられること数知れず。目標6時間って言ってたからねぇ、えらいすんません・・・。でも自分やって44歳で5時間半っておかしいで、それ。




ってことで(?)、参加された皆さんお疲れ様でした。完走出来た方出来なかった方、フレームにクラックを入れて泣いてはる方といろいろいらっしゃいますけど(笑)、怪我人は発生していないようで一安心。
わしは今回、5回目の王滝にて初めて納得満足できる結果が出せたのやけど、満足してしまったので来年は走る気が失せてます。なんかね、エリートライダーがドカスカ出てきて高速化してきて、初年度の和気藹々とした雰囲気がだんだんと崩れてきているような気がするんよ。申し込み時にも、当日の朝に速達を使わないとエントリー出来ないってのも、もうお腹一杯。乗鞍もそれが嫌で止めてもたし。
この大会、Jシリーズとか縁の無いローカルホビーMTBerとしては、『肩に力の入っていない人達のお祭り』って感じがたまらなく魅力的やったんやけどね。と言いながら、高速化に対応してトレーニングでキバッて、タイムを出して満足している自分に矛盾も大きく感じるのよ。まぁ、来年の3月にヤル気になってれば再エントリーを考えるけど、とりあえず120kmとの分かれ道では全力で右に曲がりますんで(笑)




距離0kmのアベ無し。ちゃうってば、100kmのアベ18.9km/h。