片想い

どういう気紛れなのか、木枯らしが吹き荒れる中を木津川沿いのサイクリングロードに躍り出た。
絶え間なく吹き続く横風の中をフンガーフンガー漕ぐこと、ちょうど2時間。いつの間にやら出ていたアベ28.9は、ここんところの脚力にしてはありえへんほど超高速やった。


ただしペダルを踏みつける身体とウラハラに心は上の空。先日下って来た富士見の想ひ出に取りつかれていて、蜘蛛の巣のように絡みつく楽しい記憶から抜け出ることがなかなかできん。
あのバンクで遠心力を感じたなぁとか、ガレ場をもちょっと飛ばせたらなぁとか、その他その他。そうこうしているうちに脚には更に力がこもり、心はどんどん下り系統へ・・・気付くと「ダブルクラウン欲しい病」に罹患している自分がいた。
現状のφ32タラスでも上手い人なら何の問題も無くピヨヨンと走りはるのやろけど、わしの場合、迫りくるドロップオフ毎に「ナンマンダ」と両手を合わせて祈っているのが現状。空中で姿勢を崩しませんように、無事に着地できますように、出来るものならカッコ良くひねりを入れちゃったりなんかできますように。この両手をハンドルから離している瞬間が危険なんだなぁ。
その昔、テックイン(倒立の160mm、もちダブルクラウン)で下っていた時は、ドロップオフだろうがドロップオンだろうがパイルダーオンだろうが、お構いなく突っ込んでは落ちて曲がって楽しんでいた記憶がある。若かったということもあるやろけど、確かに強烈な頑丈さと頼もしさを其処に感じていた。
あの素晴らしい愛を、じゃなかった剛性をもう一度。そんな妄想片想いに胸を焦がしつつ、サイクリングロードに別れを告げたのだ。