熱い想い

「ラーメンセット、ラーメン大盛りで。」
『コッテリですよね。』
と言いながらフェードアウトしていくおばちゃん。わし、まだ返答してへんがな。お客に対する質問じゃなくて、自分に言い聞かせて納得満足の店員の態度。デフォルトはどちらかなのか、この店でははっきりしているようで、製作者の「ウチはこれ!」な想いが伝わってきて嬉しくなった。




わしも満足しながらズルズル食ってると、隣に駆け込んできたネクタイ姿のお兄ちゃんも「ラーメンセット、ラーメン大盛り!」
但し「アッサリで」。


それを聞いたおばちゃんの目じりがピクピクッとなっとったんは見逃さへんかったけど、しゃぁないね。スープがカッターシャツに飛んだらどーしよー、ネクタイが丼に入ったらどーしよー。なんて考えると、守りに入った人生ではアッサリへあっさり流れるんも、これまた渋い決断よ。それに、わしの丼に注がれる君の視線、内心は「ほんまはそれ食いたいねん、わし!」なんてな気持ちが通じてきたわ。


男の熱い想いは確かに伝わった。でも仕事のためお客のため、しいては家族のために悲しみを堪えつつ、あえて自分の希望をねじ曲げ頼む丼1杯のラーメン。想像すると涙と鼻水を噴出しそうやったから、スープと一緒に啜りこんだわ。おかげでスープも鼻水も完食。


お兄ちゃん、今度は休みの日に来店するんやで。